薬局やショッピングセンターに行くとたくさんの歯磨き粉が売っています。さらにamazonや楽天市場などのネットショップを見るとその種類は何倍にも増えます。
みなさんどうやって選んでいますか?
一言で歯磨き粉といっても液状やジェル状、粉タイプなどの種類があり、含まれる成分によってもその効果は大きく異なります。
容器の裏側には成分や説明が記載されていますが、正直どのパッケージも同じに見えますよね。
そこで今回は、歯磨き粉にはどんな種類や成分があり、どんな効果があるのかについて調査してまとめてみました。
お口の病気や、歯の汚れなどに悩んでいる方は参考にしてみてください。
歯みがきをしないとどうなる?
もし歯みがきをしないとどうなるのでしょうか。虫歯になる?口がクサくなる?
色々と考えられますが、項目でまとめてみました。
虫歯になる
歯や舌の表面に付着した食べカスは、放置すると細菌の塊である歯垢(プラーク)となります。その後、2日程度で歯石に変わり、自分では除去することができない状態になります。歯垢、歯石は細菌であり、その菌が卵が腐ったような腐敗臭がするので、口がクサくなります。
この歯垢にはミュータンス菌という細菌がいて、酸をつくり歯を溶かしてしまいます。これが進行して神経まで達すると痛みを生じ、治療も削るだけではなく神経を取ったり、重度になると抜歯が必要になります。
歯垢とは、歯の表面を指で触った時にネバネバしたものが付くことがありますが、このネバネバのことで、別名「プラーク」とも呼ばれています。
食後およそ4~8時間ほどでこの歯垢が作られてしまうため、毎食後の歯みがきが大切です。
歯垢は細菌の塊で、1gあたり1000億個以上の細菌が詰まっていると言われています。
これを放っておくと菌の作った酸が歯の表面のエナメル質を溶かしてむし歯を発生させてしまうことがあります。
APAGARDより
歯石とは一言で言えば歯垢が硬くなったもののことで、歯みがきでみがき残した歯垢はおよそ2日間ほどで歯石へと変わってしまうと言われています。
そのため歯みがきがしにくい「歯と歯ぐきの境目」や「歯と歯の間」にできやすく、歯石はその名前の通り石のように硬いため、一旦歯に付いてしまうと歯ブラシでは取れず、歯科医院で取り除いてもらわなければなりません。
APAGARDより
歯周病になり歯がなくなる
歯と歯茎の間の歯周ポケットに溜まった汚れ(細菌)によって歯肉が炎症を起こし、さらにひどくなると歯を支えている骨を溶かしてしまいます。そこから歯槽膿漏になり、歯を抜かなければいけなくなったりします。
また、歯茎が下がることによって普段は守られている歯の根っこの部分が露出し、熱さや冷たさがしみる知覚過敏になります。さらに、口臭は生グサい臭いを発します。
歯周病は、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患です。
歯と歯肉の境目(歯肉溝)の清掃が行き届かないでいると、そこに多くの細菌が停滞し(歯垢の蓄積)歯肉の辺縁が「炎症」を帯びて赤くなったり、腫れたりします(痛みはほとんどの場合ありません)。
そして、進行すると歯周ポケットと呼ばれる歯と歯肉の境目が深くなり、歯を支える土台(歯槽骨)が溶けて歯が動くようになり、最後は抜歯をしなければいけなくなってしまいます。
日本臨床歯周病学会より
舌苔が増えて口がクサくなる
舌の表面に無数にある小さな突起に様々な種類の細菌や古くなった粘膜、食べ物のカスなどの汚れが溜まったものが舌苔(ぜったい)です。下の表面が白や黄色く見えるのはこの舌苔によるものです。この舌苔が厚くなると味覚が鈍感になったり、ドブのような異臭の原因となります。
病気になる
虫歯や歯周病が進行すると、さらに血管に歯周病原性の細菌が入り込み、その血が全身にまわると、血管障害や心臓病、アルツハイマー病の促進、糖尿病などの病気にかかってしまいます。これらの歯周病の影響は科学的に証明されているそうです。
そもそも歯みがき粉ってなぜ「粉」?
歯みがき粉と聞くとチューブに入ったペーストタイプのいわゆる「練り歯みがき」をイメージする方が多いと思いますが、以前は、粉状の歯みがきを使っていました。
練り歯磨きは、1911年にライオンが発売した「固練りチューブ入り歯磨」が初めてのペーストタイプの歯磨き剤です。それ以前の粉状の歯みがきは、1896年にライオンが発売した無機粉体を原料とする「獅子印ライオン歯磨」が最初です。この当時の粉体での歯みがきが「歯磨き粉」として今でも呼ばれている理由です。
現在でも粉タイプのメリットを生かした歯みがき剤は存在し、その他一般的なペーストタイプや、ジェルタイプや液体タイプのものも存在します。
歯みがき粉の種類
歯みがき粉はまず、日本薬事法によって「化粧品」と「医薬部外品」の2種類に分類されています。「化粧品」は基本成分だけでできているもので、さらに薬用成分が加えられているものを「医薬部外品」といいます。「医薬部外品」とは、厚生労働省が許可した効果・効能に有効な成分が、一定の濃度で配合されているもののことです。日本で市販されている歯みがきの90%は「医薬部外品」となっています。
また、歯みがきの形状には、チューブタイプ、ジェルタイプ、液体タイプ(デンタルリンス)、粉末タイプがあります。
チューブタイプ
チューブにペースト状の歯みがき粉(練り歯磨き)が入ったもので、特徴は「研磨剤」と「発泡剤」が含まれています。
「研磨剤」には細かい粒子によって、歯の表面についた歯垢や着色汚れを落としやすくする働きがあり、「発泡剤」は歯みがき粉を泡立てることで口の中に成分を拡散させ、汚れが落ちやすくすると言われています。しかし、お互いに欠点もあり、研磨剤は粒子によって歯や歯ぐきを傷つけてしまう恐れがあること、発泡剤は口が泡でいっぱいになり歯磨きの時間を短縮させて逆に汚れが落ちにくくしているとも言われています。
ジェルタイプ
チューブタイプにある研磨剤や発泡剤が含まれないことから、「歯や歯ぐきに優しい歯磨き剤」として注目されています。
また、ジェルによって歯磨き剤の成分が歯に密着しやすく、歯の細かいすき間にまで届きやすいことにあります。研磨剤が含まれていないので、歯の表面の着色は落ちにくいですが、電動歯ブラシなどを利用すると歯への負担も小さく、汚れも落ちやすいので相性が良いです。
液体タイプ
液体タイプには「洗口液」と「液体歯磨き」の2種類があります。「洗口液」はすすぐだけで、食べカスや汚れ、ネバネバを洗い流してくれるので、磨き残し対策のための歯磨き後の仕上げとして使うと有効的です。「液体歯磨き」液体タイプの歯磨き粉であり、他のタイプと同様に口に含んですすいだ後に歯ブラシでブラッシングするものです。これには研磨剤が含まれていないので歯を傷つけにくくなっています。
粉末タイプ
以前はよく使われていたタイプですが、現在では、生きた乳酸菌を配合したり、無添加やオーガニックの歯磨き粉として使用されていることが多いです。
また、チューブタイプでは実現できない洗浄力があり、タバコのヤニ、歯に粘る洋菓子や油の多い料理、落ちにくい歯垢などを磨き落としたいときには効果的です。
歯みがきに含まれる成分の働きと主成分
ここでは歯みがきに含まれる成分の働きと、その主成分について基本成分と薬用成分に分けて紹介します。
<基本成分>
●清掃剤(研磨剤)
働き:歯の表面を傷つけずに、歯垢(プラーク)や着色物(ステインやタバコのヤニ)などの汚れを落とします。
主成分:リン酸水素カルシウム、水酸化アルミニウム、無水ケイ酸、炭酸カルシウム
●湿潤剤
働き:歯磨剤に適度の湿り気を与え、凝固や分離を防ぎます。
主成分:グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール
●発泡剤
働き:歯磨剤を泡立てて口の中に拡散させて汚れの除去を促す。泡が立つことで磨けたつもりになってしまうため、歯科医院は発泡剤が少ないものを推奨しています。
主成分:ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンソーダ、ショ糖脂肪酸エステル
●粘結剤
働き:粉体と液体成分とを結合させ、適度な粘性を与えて泡立ちを調整します。
主成分:カルボキシメチルセルロスナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン
●香味剤
働き:爽快感と香りをつけ、歯磨きしやすくなるとともに、消臭効果が得られます。
主成分:サッカリンナトリウム、メントール、ミント類、ハッカ油、ユーカリ油
●防腐剤、保存剤、保存料
働き:変質を防ぐ。
主成分:安息香酸ナトリウム、パラベン類
●浸透剤
働き:成分を浸透させやすくします。
主成分:ポリエチレングリコール4000
<薬効成分>
●働き:齲蝕(虫歯)予防
主成分:モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)、フッ化第一スズ、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、デキストラナーゼ、ラウロイルサルコシンナトリウム(LSS)
●働き:歯周病予防
主成分:塩化クロルヘキシジン、トラネキサム酸、グリチルリチン酸ジカリウム、β-グリチルリチン酸、ε-アミノカプロン酸、ビタミンE、塩化ナトリウム、ヒノキチオール、アラトイン、塩酸ナトリウム、トラネキサム酸、塩化リゾチーム、酢酸トコフェロール、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)
●働き:プラークの分解
主成分:デキストラナーゼ
●働き:歯石沈着防止
主成分:ポリリン酸ナトリウム
●働き:知覚過敏抑制
主成分:乳酸アルミニウム、硝酸カリウム
●働き:タバコのヤニ除去
主成分:ポリエチレングリコール
●働き:口臭防止
主成分:ε-アミノカプロン酸、β-グリチルレチン酸、ラウロイルサルコシンナトリウム(LSS)
成分別の歯磨き粉の働きと効果
ここではそれぞれの成分がどんな働きをしているかについてまとめてみました。
ε-アミノカプロン酸/β-グリチルレチン酸
歯肉炎・歯周病(歯槽膿漏)などの予防や口臭の防止に効果があります。
イソプロピルメチルフェノール(IPMP)
殺菌作用があるため虫歯の予防や、歯肉炎の予防に効果があります。
ラウロイルサルコシンナトリウム(LSS)
虫歯の予防や進行を抑制する効果あり、口臭の予防にも有効です。
フッ化ナトリウム/モノフルオロリン酸ナトリウム
フッ化ナトリウムはナトリウムとフッ素の化合物です。虫歯を予防し酸を抑制し、再石灰化を促す効果があります。 モノフルオロリン酸ナトリウムは主に小児用歯磨き剤に配合されます。
サリチル酸メチル
歯茎などの炎症を抑える効果があります。
トラネキサム酸
歯周病(歯槽膿漏)などによる出血を抑制する効果があります。
乳酸アルミニウム/硝酸カリウム
象牙細管の封鎖を薬用成分が塞ぐことによって歯がしみるのを予防します。
ポリリン酸ナトリウム/ポリエチレングリコール
タバコのヤニを除去する働きがあります。また、歯石の沈着を防ぎます。
デキストラナーゼ(酵素)
歯垢(プラーク)を分解・除去し、薬用成分でコーティングすることで、再付着を防ぐ効果があります。
アラントイン
歯茎細胞を活性化して歯茎の組織を修復する組織修復成分です。
炭酸水素ナトリウム
炭酸水素ナトリウムとは「重曹」のことで、歯の表面に着色した汚れを落とすことがあります。
塩化セチルピリジウム(CPC)
口内の細菌の繁殖を抑制します。
グルコン酸クロルヘキシジン
抗炎症作用があり、虫歯の予防にもなります。
参考:歯医者さんネット、白銀高輪の歯医者さんコラム、中通歯科診療所 歯科通信
おすすめの歯磨き粉
ホワイトニングにおすすめの歯磨き粉はこちらの記事をご覧ください。
口臭対策におすすめの歯磨き粉はこちらの記事をご覧ください。
まとめ
今回は歯磨き粉の種類、成分、そして効果について紹介しました。含まれる成分によって口臭、虫歯、歯周病、そしてホワイトニングに効果的な歯磨き粉って違うんですね。
また、パッケージの裏面にかかれている成分や用語についてもこの記事を参考にすれば少しは理解できるようになるかと思います。
今までなんとなく買っていた歯磨き粉が、自分のニーズに合わせて選べるようになって、さらに求める効果が実感できるようになれば幸いです。