「子どもの身長は思春期までに決まる」
テレビや雑誌に出てくる芸能人やモデルさんは身長が高くて痩せていてかっこよくて魅力的ですよね。長身でかっこよくなりたい、モテたい、身長が低いことがコンプレックスになっているなど、多くの日本人が抱えている悩みです。子どもを持つ親からすると、子どもには同じ悩みを持ってほしくないと考えている人も非常に多いです。
ここでは身長が伸びるメカニズムと、身長を伸ばす方法についてまとめてみました。
親の身長から子供の身長が分かる計算式(※1、※2)
身長を左右する要因として、内的、外的要因に分けられます。下の計算式は、内的要因である「遺伝」によって決められる子どもの身長の予測式です。
出典:タニタ
親の身長を入力すると自動で計算してくれるサイトを紹介します。
→高精度計算サイト
この計算式を使うことで、親の身長から子どもの身長を予測することができます。親の平均よりは男の子は大きく、女の子は小さくなる傾向にあるようです。しかし、遺伝以外の要因によって決まる身長が±8cm程度と言われています。8cmの差って大きいですよね。親の身長が低いからといってあきらめず、正しい知識を学んでできることから始めましょう。
身長を決める要因としてあげられるものは以下の通りです。
【内的要因】 遺伝、ホルモン、代謝、神経系など
【外的要因】 栄養、感染、薬剤、情緒・精神的環境、運動、睡眠など
身長が伸びるメカニズム(※1、※2)
そもそも、身長はどうやって伸びるのでしょうか。
一言でいうと、「骨が伸びている」です。もう少し詳しく説明すると、骨一本一本の間には「骨端線(成長線)」という軟骨の部分があり、ここで細胞分裂が盛んにおこなわれて骨の組織をつくっています。この部分が骨になることで、背が伸びていくのです。したがって、骨端線がある分、身長は伸びる可能性があるといえます。骨端線の有無はレントゲンでも確認できます。
次に、どのようにして骨端線は成長するのでしょうか。
骨端線の成長には、「成長ホルモン」、「性ホルモン」、「甲状腺ホルモン」という3つのホルモンが大きくかかわっています。
体内でつくられるホルモン物質は、その種類によって作用する組織が決まっており、その特定の器官にだけ働きかけます。
成長ホルモンは、その名の通り身長を伸ばすためには最も重要なホルモンで、血液によって肝臓に運ばれると、「ソマトメジンC(IGF-I)」と呼ばれる成長因子がつくられて血液中に放出されます。このソマトメジンCが骨に届いて働きかけることで、軟骨細胞が増殖して骨を成形していきます。
ソマトメジンCは、成長段階にあるときには骨の成長を促しますが、成長が止まった後では筋肉を太くしたり、血管や神経など体の組織をつくる働きをするようになります。
では、骨の成長を止めるのは何かというと、それが性ホルモンです。
性ホルモンは大人になるように促すホルモンで、思春期になると活発に分泌されるようになります。これによって男は声変わりやヒゲが生え、女子は胸が膨らんできます。
性ホルモンは成長ホルモンの分泌を増加させたり、骨に直接働きかけたりして骨の成長を促進する働きをする一方で、子供の骨を硬く成熟した大人の骨へと成長させ、身長の伸びを止める働きも担っています。思春期に入って身長がグンと伸びた後、伸び率が急激に低下するのはそのためです。
また、甲状腺ホルモンは、骨の成長を促進したり、細胞の新陳代謝を活発にしたり、成長ホルモンの分泌を促す働きをしていますので、これら3つのホルモンの働きによって身長が伸びる仕組みになっています。そのため、これらのホルモンの分泌に関係する体の異常(甲状腺、脳下垂体、肝臓)によって「低身長」(成長障害)といわれる状態に陥ってしまいます。
もしも子供の成長が気になるときには、ホルモンの分泌に異常がないかを検査してみるとよいでしょう。早期発見と治療が大切になります。
出典:
身長は何歳まで伸びるのか?
子どもが成長する過程には、「乳幼児期」「前思春期」「思春期」の大きく3つの時期があります。
グラフを見て分かる通り、成長率が最も高いのは思春期で、およそ20~30cmほど伸びるといわれています。では、背が低い人はその時期にあまり伸びなかったのでしょうか。実は、そうではありません。思春期にはほとんどの人が同じような成長率で背が伸びています。重要なのは、成長期ではなく、その前の乳幼児期と前思春期、特に、乳幼児期が大切なのです。乳幼児期の成長率は思春期以上であることが、グラフからも分かりますね。そして、思春期が終わると背の伸びは止まります。繰り返しになりますが、身長は思春期の間で決まると思われがちですが、思春期が始まる時期と、そこまでにどこまで身長を伸ばせるかが大切になってきます。
時期 |
乳幼児期 |
前思春期 |
思春期 |
年齢 |
0~4歳 |
男:4~11歳
女:4~10歳 |
男:11~16歳
女:10~14歳 |
主な成長因子 |
栄養 |
成長ホルモン |
性ホルモン |
個人差 |
ある |
ある |
あまりない |
身長を伸ばす方法(※3、※4、※5、※6)
動いて、食べて、寝る
では、医学的な根拠に基づいた、身長を伸ばすための正しい方法とは何でしょう。
それは、「睡眠」「食事」「運動」です。当たり前すぎてすみません。
この3つの要素で、どれだけ「成長ホルモン」を分泌できるかで背の伸び方が変わってきます。
まず、「睡眠」です。
成長ホルモンは昼間よりも夜間、しかも寝ている間に多く分泌されています。
しかも、深い睡眠(ノンレム睡眠)のときに分泌されるため、質の良い睡眠をとる必要があります。また、毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きるという規則的な生活が体の調子を整えてより効果的です。どれくらい寝ればいいかというと、年齢ごとに少しずつ違うと言われています。
<睡眠時間目安>
1~3歳 12~14時間
3~5歳 11~13時間
5~12歳 10~11時間
次に、「食事」です。
「牛乳をいっぱい飲むと背が伸びる」と聞いたことはありませんか?
これ、間違っているんです。カルシウムには背を伸ばす作用があると思われていますが、実ははありません。カルシウムが骨に良いのは事実ですが、カルシウムは軟骨の層を石灰化し硬くするためのもので、骨を強くする働きをしているのです。
背を伸ばす上で重要なのは、たんぱく質なんです。骨が伸びる末端の「骨端線」という軟骨細胞の原料となるのが肉、魚、卵、チーズなどに含まれるたんぱく質。現代人は夫婦共働きも一般的になり、朝がより忙しくなっています。そのため、子どもも朝食をとらなかったり、食べるけど主食だけで終わってしまうことが多くなっています。朝から納豆、魚、卵など、しっかりとたんぱく質を摂ることが大切です。
また、もう一つ成長ホルモンに関係していて、背を伸ばすのに欠かせない物質が「亜鉛」です。日本人は1日に必要な量(15mg)の亜鉛を摂れていない人が多いようです。亜鉛を多く含む食品として、ピーナツ、牡蠣、レバー、うなぎの蒲焼、納豆、ゴマなどがあります。背を伸ばすためには、たんぱく質と合わせてこれらを積極的に摂取するといいでしょう。
次に、「運動」です。
「バレーやバスケをやると身長が伸びる」「鉄棒にぶら下がる」「剣道はしないほうがいい」など、身長にまつわる運動の話しを聞いたことがあると思います。運動は筋力をつける、基礎代謝を高める、心肺機能を強くする、平衡感覚を養う、ストレス発散になるなどの効果があげられるほか、運動をするとエネルギーを消費し、食欲増進と、疲れによって質の良い睡眠が取れるようになります。これが結果として成長ホルモンの分泌を促進する効果となります。なので、体を動かす運動であればなんでもいいのです。バレーやバスケをやっている人が大きいのは、大きい人が選ばれやすいからです。鉄棒や剣道の影響は一時的にはあるかもしれませんが、すぐに元に戻ります。いっぱい運動して、バランスのいい食事と、質の高い睡眠をとることが大切です。
最近では、運動能力が低下している子供が増える傾向にあります。
公園で思いっきり走り回る、プールで友達と泳ぎ回るでもなんでもいいです。子どもが好きな運動を続けることで、身長もすくすくと伸び、健康的な子どもに育ちます。
思春期になる時期を遅らせる
思春期の時期を決めるのが、性ホルモンの分泌です。性ホルモンは、普段の生活によってある程度ならコントロールでき、特に効果的なのは睡眠です。
性ホルモンは脳の松果体から分泌されるメラトニンというホルモンによって分泌が抑制されています。そして、メラトニンは睡眠中に多く分泌されます。子供のうちから睡眠が短いと、メラトニンの分泌量が少ない分、性ホルモンが抑制されず、成長ホルモンの身長を伸ばす働きを止めてしまうので、早い時期に身長の伸びが止まってしまいます。日本人の平均睡眠時間は7時間22分で、他の先進諸国に比べて最も少ない結果となっています。欧米諸国と比較すると、日本人の平均身長ってまだまだ低いですよね。またもう一つ気をつけなければならないのが「肥満」です。脂肪細胞からは食欲や代謝などの調節を行うためにレプチンと呼ばれるホルモンが分泌されています。ところがこのレプチンは性機能の維持や性成熟にも大きく関係していて、早く思春期を迎えてしまうことになると言われています。
日本人の思春期は12歳6か月頃からと言われていますが、ヨーロッパやアメリカではその2か月~1年先となっています。欧米人って日本人より身長が平均して高いですよね。このことからも思春期の時期を遅らせて、それまでに身長をより多く伸ばせれば、欧米人並みの身長になることも夢ではないかもしれません。
ストレスをなくす
日本人は身長が低い胴長なイメージが強いですが、最近テレビで見かけるモデルさんは長身で足が長く、欧米人のような体型の方も多くなってきましたよね。
厚生労働省による「国民健康・栄養調査」を見ると、日本人の平均身長(30歳代)は、1950年では男性が160.3cm、女性が148.9cmでしたが、2010年には男性が171.5cm、女性が158.3cmと、60年の間で約10cmも伸びています。この要因として、高度経済成長による食生活の変化が大きく影響していると言われています。
しかし、文部科学省が発表した「平成26年度学校保健統計調査」によると、日本の児童の身長は平成6年~13年度あたりをピークに、その後は横ばいとなり、ここ10年以上も変わっていないことがわかりました。これには、睡眠不足や運動不足、栄養バランスの悪い食事などの環境の変化に加えて、ストレスが大きく影響しています。ストレスを抱えると、いくら栄養バランスの取れた食事をしても、体内でうまく代謝できず、成長ホルモンの分泌は減少してしまいます。また、ストレスによって睡眠時間が減ったり質が低下すると、身長を伸ばすうえでは大きなマイナス要因となってしまいます。
適度なストレスは私たちによい刺激となって、「やる気」を起こさせますが、過度のストレスは血管を収縮して血流を悪くしたり、胃液の分泌を低下させて胃壁を傷つけるなど体調を崩す原因になります。
では、小さいお子さんはどのような時にストレスを感じるのでしょうか。
3歳くらいになると感受性が豊かになり、周りの人の気持ちに気づくようになります。でもまだまだ自己中心的で自分のやりたいことや感情を抑えきれないけど、なかなか思うようにいかないときにストレスを感じています。保育園や学校での集団生活や、先生の言うことを聞くなど、子どものとっては大きなストレスになるんですね。そんな状況でも家に帰って、パパママが話しを聞いてあげたり、スキンシップをいっぱいとってあげれば問題ありませんが、子どもに厳しく接しすぎて甘えさせない、忙しくて構ってあげられない、夫婦仲が悪いなどで、家庭内の雰囲気が悪いと、ストレスを発散する場がなく、溜め込んでしまいます。
子どもにとってはパパママが何よりも重要な存在です。忙しい、疲れていて分かっていても行動できないこともあるかもしれません。でもそれを子どもが見て、子どもも真似します。子どもは親の鏡です。子どもが機嫌が悪いのは、親自身がそうであるからです。大切な我が子を温かく見守ってあげてください。
市販のサプリの効果は?(※7)
成長ホルモンの分泌を促進する代表的なサプリメントには、「アルギニン」があります。アルギニンは、医学的にも成長ホルモンの分泌試験にも使用されていますが、試験に用いられるアルギニンの量は、体重1キロあたり0.5グラムです。これに対して、販売されているサプリメントに含まれるアルギニンの量は、1カプセル当たり0.2グラムほどで、かつ内服薬なので全部がそのまま吸収されないどころか、ほとんど残りません。
また、成長ホルモンそのものが含まれているサプリメントもありますが、成長ホルモンはタンパク質ですから、口から入ると肉や魚と同じように唾液や胃液で分解され、栄養としてアミノ酸になるだけのことです。成長ホルモンを体内に投与する場合は、必ず注射なのです。
なかには、成長ホルモンを鼻や口に噴射するスプレーも出回っていますが、これも効果は全く期待できません。
人気のサプリを紹介
市販のサプリメントによって、ダイレクトに身長を伸ばす効果があるというよりは、栄養をバランスよく摂ってサポートするような役割になっているようです。大人が健康を気にしてとる栄養サプリのような感覚ですね。
子ども用のサプリは小さい子どもでも飲みやすいように甘くしてあったり、小さくしてあったりする工夫がされています。
なかでも人気のサプリを一部紹介します。
アスミール
タレントの小倉優子さんのCMでも話題になたアスミール。その他テレビや雑誌でも多く取り上げられています。粉末を牛乳に溶かして飲むタイプで、ココア・いちごミルク味の2種類。牛乳が苦手なお子さんでも飲みやすいですね。タレントの後藤真希さん、hitomiさんのインスタでも紹介されていました。
→アスミール 詳細はこちら
贅沢のびるんるん
楽天 「栄養食品部門」の日本、アメリカ、フランスで1位を獲得。特長は、アレルギーの原因物質27品目を不使用にしている点です。また、タブレットはココア味になっていて、小さなお子さんでも食べやすくなっています。タレントの藤本美貴さんや山本優希さんのインスタでも紹介されていました。
→公式サイトはコチラから
ノビルン
2017・2018年のモンドセレクション金賞を2年連続で受賞しています。
栄養素がバランスよく摂取できる中でも、たんぱく質が比較的多いです。「ラムネ味・ココアチョコ味・パイナップル味・ぶどう味」の4種類から選べて、子どもも飽きずに食べられます。
「ノビルン」>>詳しくはこちら
セノビック
製薬メーカーの大手ロート製薬が販売する「セノビック」。骨を形成するカルシウムと、その吸収を促進するビタミンDを多く配合しています。牛乳に溶かして飲む粉末で、子どもに好評のココア味です。
→公式サイトはコチラから
まとめ
今回は、子どもの身長を伸ばす方法についてまとめてみました。子どもがすくすくと育つには、運動と、バランスのとれた食事と、睡眠。そして家族仲良く、ストレスフリーな生活が大切です。当たり前のようで、なかなかできていない方が多いのではないでしょうか。この記事を読んだことが何かのきっかけになれば幸いです。
【参考資料】
※1 タニタの健康コラム「遺伝だけではない!子どもの身長を伸ばす方法とは?」
※2 東京大学、オックスフォード大学、ハーバード大学の最新研究成果に基づく本当の身長の伸ばし方
※3 ぬかたクリニック 「どうすればもっと身長を伸ばすことが出来るのか?」
※4 カラダアルファ(α) 「身長伸ばす方法」
※5 yomiDr.「日本人の睡眠時間は先進諸国で最下位! 平日の寝不足は認知症、うつのリスクにも」
※6 teniteo 「3歳児もストレスがたまる!ストレスの原因や解消法を紹介」
※7 日本小児内分泌学会 「身長を伸ばす効果がある」と宣伝されているサプリメント等に関する学会の見解
文献:肥満度判定のための幼児標準身長体重曲線